op.10「2015ゴールデンシードル」

P4290856 375ml入りです。

ご存じのとおり長野県はリンゴの産業が盛んです。信州りんご3兄弟と銘打って長野県独自のリンゴ品種を売り出していますが、今年はその中の一つ「シナノゴールド」だけで醸造してみました。産地は伊那ワイン工房のある伊那市周辺のJA集荷のものです。まだ新しい品種で、黄色いリンゴです。「リンゴは赤」が生食販売では絶対条件なようで、いくらテレビで黄色リンゴの効能を宣伝してもやはり赤いリンゴには販売上敵わないそうです。「王林」という黄色リンゴのエースが有名ですが、王林は片親である「印度リンゴ」のイメージどおりに独特の香りがあり、甘味が強く酸味がありません。ファンは多いのですが、シャキッとしたリンゴらしさにかけるのと、やや晩生で「ふじ」の収穫時期とかぶってくるのが弱点でしょうか。ジュースにしても香りと甘さですぐに品種特定されます。こんな販売苦戦の黄色リンゴ界の次期エースが「シナノゴールド」でしょう。平成11年品種登録された新人ですが、甘味あり食味良しで、なんといっても酸味が強く貯蔵性がふじリンゴ並みに良い、加工業界にとっても期待の品種です。この数年収穫量が伸びてやっと加工用に回ってくるようになり(単価の安い生食落ちということ)ジュースも出回ってきましたが非常に美味しいものができます。話によるとこの品種はヨーロッパで早速注目され大規模な栽培がされてゆくようですよ。日本での欠点は栽培がやや難しいことと「黄色いこと」だそうです。脱線しますが、黄色いりんごで「ぐんま名月」という品種が昨年あたりから目に付くようになってきました。適期に収穫されたものは抜群に美味しいと感じました。遅い時期に店頭で見つけたらお試しください。群馬をとられて「名月」で売られているかもしれません。

さてシードルの紹介ですが、「紅玉」で作った昨年の良い点悪い点を反省し、今年は生産量が増えて地元で加工用に入手しやすくなったこの品種を狙ってみました。とはいえ、リンゴワインやシードルの味は品種の味より醸造の仕方での変化の方が数段に大きいと私は思っておりますので、このシードルがシナノゴールドの特徴だとはまだ思っていません。リンゴ果汁に炭酸を加えたようなリンゴワインは醸造的には優秀ですが、年のいったオーナー醸造者の作るべき方向ではないと思っています。方向性としては、できるだけジュース感覚から離れてリンゴらしさを意識させないほどに発酵産物にする試みをしています。「ゴールデンアップル」のタイトルを付けましたが、たしかに黄金色のシードルです。でも残念ながら、黄色いリンゴだから黄色いシードルになったわけではありません。果汁を酸化させ発酵も敢えて不健全な方向を取って作った結果がこの色になります。このワインを濾過をして透明なテーブルワインに仕上げると恐らく個性的すぎて受け入れらえないと思いますが、壜内二次発酵によりある意味「浄化」されることにより欠点から「コク味」に変わってくれることを期待してみました。

壜に詰めてから約3カ月たち、壜内での二次発酵も終わり発酵オリによる「浄化」の作用もできてきたのでこの時期に発売としました。ラベルはお友達のデザイナーさんのお力で、このシードルには過ぎた大変に良いイメージのものができたと思います。

リンゴのワインやシードルはこの地域や日本にとってはまだまだ確立されていないものだと思います。だからこそ海外の商品と比較して優劣を問う時期ではなく、日本人が好きで飲んでくれる果実アルコール発酵飲料を探って問おてゆくチャンスだと思っています。 一般ワインの既成概念を多少は乗り越えてでも大胆にチャレンジできるのがここの特徴だと決めていますから。「クセがあるなー。でも味わいがあるかも」と思っていただけたらこのシードルの目的達成だと思っています。もっと熟成させ夏を越すともっとクセがとれて安定するのではないかとも期待していますが。