op.15 「2016 ナイアガラ辛口」

OP.15ナイアガラ辛口2016  375ml入り1000円(消費税別)

2016年産のワインを発売します。長野県の代表的な生食用ブドウの「ナイアガラ」のワインです。香りの強いアメリカ系の生食用品種をワインにすることに抵抗のある方もいますが、私はこの地でワイン醸造をする限り、ナイアガラをより魅力あるワインにすることが使命であると勝手に思い込んでおります。伊那ワイン工房では秋最も早くに入荷するブドウですので、新しい醸造シーズンへの意気込みを示す品種であり、まさに「一年の計はナイアガラにあり」となります。2014年のop.1  2015年のop.7に続く3度目の造りとなります。老舗の食堂ではありませんので、「今年もいつもの同じ味」を目指すのではなく、「昨年より良いもの」を作る基本姿勢であります。

まずは2015年(op.7)の反省から。フレッシュさのみを売り物に考えたため、発酵終了直後のタンク内の味を伝えようと9月末には壜に詰め発売しました。フレッシュさは伝わったようですが、味わいの深さがなく甘さの無いジュースそのもの。イベントで試飲していただいた日本酒の杜氏さんの感想「まだ酒になっていねーな」が象徴的な評価だと思いました。しかも酒石が出るわ出るわで、「酒石は本物の証です」の文言が白々しほど立派な石柱が壜に出来上がってしまいます。新酒としては何とか売り切ったものの通年商品となると販売が止まってしまいました。2016年シーズンへの教訓、ナイアガラといえどフレッシュなだけではだめで、「味の乗り」が問われるということであります。至極当然のことでしょうが、ナイアガラのワインの可能性をなめていたのは私の方だったようです。今シーズンは新酒の発売を売店とイベントだけにとどめ、本体は常法どおりの手順を踏んで、フレッシュさを損なわない時期の12月下旬に壜詰めをしてさらに一月置いた後の発売となりました。

原料はop.1でお世話になりました箕輪町の「雅秋園」のナイアガラをいただきました。入荷日は9月1日。新鮮な酸と「閉じた香り」のまさにワイン用ナイアガラの収穫適期のブドウでした。冷水機を使い低温に発酵をコントロールして十分に時間をかけ、発酵終了後のタンパク質の処理、低温による酒石の除去なども行い、昨年の「ありのままのワイン」から「手を加えたワイン」にしました。

実は、昨シーズンのop.7の不振から、少し甘口にしようと思い仕上げをしていました。売店で少量販売した新酒はやや甘口のタイプで少量ですがあっさりと売り切れましたし、これ以上辛口の在庫を抱える必要はありません。やや甘口の商品にしようと準備をしていました。ワインが安定して壜詰めの時期を迎えた12月、前年の酒石ザクザクのワインを気に入ってオリジナルワインに採用いただいた県内の某リゾートホテル様から今年もオファーがあり、サンプルを送りました。この秋売店で売ったやや甘口の新酒と現在タンクにある辛口のもの両方を送り判断を委ねました。後日社内での検討会で辛口の方の採用が決まったと知らせを受けました。レストランでの食事に合わせ易いとの厨房スタッフ様からの意見が通ったそうです。気をよくした作り手は機嫌よく全量を辛口ワインとして壜詰めをしてしまいました。同じタイプのワインをop.7とop.15の異なるビンテージで売り続けることになります。

op.15、香りは大変にフレッシュです。後味に雑味は少なく洗練された感じ。アルコールを出すための補糖をしておりませんのでアルコール分は9%と軽めですが、バランスが合っていて弱くは感じません。残糖は無く酸もきりっとしていますが柔らかい辛口で、ナイアガラの香りとも合っています。鶏肉のソテー、温野菜、根菜料理、またこの時期寄せ鍋にいかがでしょうか。